これからはまじめな記事もちょっとは書こうと思います。その第1弾。
6月28日に、米国最高裁が方法特許、主にビジネス方法特許に関する判例を出しました。原文pdfはこちらです。
Bilski v. Kappos
以前から、ビジネス方法発明の特許性、特にビジネス方式が「発明」(米国特許法101条)にあたるのかについては、議論がありました。数年前の本邦におけるビジネス特許ブームを想起される方も多いのではないかと思います。
本件でもこれが争点となり、原審のCAFC(連邦巡回控訴裁判所)は"machine-or-transformation test"(便宜上、機械又は変容テストとします)をビジネス方法発明の特許性についての判断基準として打ち出し、この判断方法の是非について最高裁の判断が待ち望まれていました。
最高裁は、機械又は変容テストは唯一の判断基準ではない旨、判示しているようです。
取り急ぎ、判決要旨の試訳をしてみましたので掲載します。なお、この試訳は内容把握のためのざっくりとした訳であり、正確性等に関しては何らの保証もありませんので、よろしくお願いします。また、段落は訳者(私)が便宜上つけたものもあります。
Bilski v. Kappos
上告人の特許出願は、エネルギー市場における商品の購入者及び販売者が、価格変動のリスクから保護され、またはリスク回避することが可能な方法に係る請求項に記載の発明による保護を得ようとするものである。主要クレーム(key claim)は、リスクを回避する方法を示す一連のステップを記載するクレーム1、及び、クレーム1の概念を単純な数式中に当てはめたクレーム4である。他のクレームは、クレーム1及び4を適用して、エネルギー供給者及び消費者がマーケット需要の変動から生じるリスクを最小化する方法を記載する。
特許審査官は、前記特許出願を、発明が特定の装置で実施されておらず、単に抽象的なアイデアを操作するものであり、そして、純粋に数学的問題を解決するものであるという理由で、拒絶した。
特許審判・抵触部(The Board of Patent Appeals and Interferences)は、これに同意し維持した。
CAFCも同様に維持した。大法廷は、請求項記載の発明が、米国特許法101条の下で特許性のある“プロセス"であるか否かを決するための従前のテスト、すなわち、当該発明が“useful, concrete, and tangible result"を生じたか否か(State Street Bank & Trust Co v. Signature Financial Group, Inc., 149 F. 3d 1368, 1373参照)を拒絶し、これに代えて、請求項のプロセスが、
(1) 特定の機械又は装置(machine or apparatus)と結びつけられ、又は、
(2) 特定の物品を異なる状態又は物に変容する、
場合に、特許要件を満たすと判断する。
結論として、この“機械又は変容テスト"が101条の“プロセス"の特許性を決定する唯一のテストであり、当該法廷はこのテストを採用し、本出願が特許要件を充足しない旨を維持した。
上告棄却。
545 F. 3d 943を維持する。
ケネディ判事は、第II–B–2及びII–C–2部分以外の、本法廷の意見を述べ、上告人の請求項記載の発明は特許性を有さない旨結論づける。
(a)101条は、特許性を有する4つの独立の発明又は発見のカテゴリー:プロセス、機械、生産物及び組成物を特定する。
"発明の才は惜しみない奨励を受けるべき"( Diamond v. Chakrabarty, 447 U. S. 308–309)ことを担保するため、"このような敷衍可能な用語を選択して・・・議会は明白に、特許法の範囲が広くなることを企図していた"(同303、308)。本法廷の判例は、101条の広範囲にわたる基本原理に対して、"自然法則、物理現象、及び、抽象的アイデア(同309)"という3つの特定の例外を与えている。制定法の文言では要求されていないが、これらの例外は特許性を有するプロセスは"新規及び有用"でなければならないとする概念と矛盾しない。そして、いずれにせよこの例外は、150年前から制定法の先例拘束性の問題として、制定法の範囲を規定してきた(Le Roy v. Tatham, 14 How. 156, 174参照)。
101条の要件は、最低でも必要な要件(threshold test)にすぎない。請求項記載の発明が前記4カテゴリーのうち1つに入るとしても、さらに新規性(102条参照)、非自明性(103条参照)、並びに、完全及び詳細な記載(112条参照)を含む、"本法の定める条件及び要件"101条(a)を充足していなければならない。
登録時の本発明は"プロセス"としてクレームされており、これは100条(b)では、" 方法,技法又は手法をいい,既知の方法,機械,製造物,組成物又は材料の新規用途を含む"と規定されている。
(b)機械又は変容テストは、101条の特許要件についての唯一のテストではない。
本法廷の判例は、このテストは有用及び重要な手がかり又は調査手法ではあり得るが、発明が101条の"プロセス"としての特許要件を充足するか否かを決定する唯一のテストではないことを確立する。
これに反して、CAFCは、制定法の解釈の2原則に違反している。:法廷は、"特許法に、立法者が明示していない限定及び条項を読み取るべきではない(Diamond v. Diehr, 450 U. S. 175, 182)"、及び、"他に規定のない限り、字句は通常の、現代的、一般的な意味に解釈される(同)"。本法廷は、"プロセス"の通常の、現代的、一般的ないかなる意味も、機械または物品の変容と結びつけられることを要することについて不知である。
被告特許庁長官は、本法廷に、101条の他の3つの特許性を有するカテゴリーによって、"プロセス"が機械または変容に関するように制限されると解釈されるべきことを主張する。しかし、100条(b)はすでに明示的に"プロセス"を規定しており(Burgess v. United States, 553 U. S. 124, 130参照)、本条項に他のカテゴリーが含まれていることは、"プロセス"がそれらの1つと結びつけられる必要があることをなんら示唆していないのであるから、列挙されたものと同種との解釈をする原則(doctrine of noscitur a sociis)はここでは採用できない。
最後に、CAFCは、機械又は変容テストを唯一のテストである旨を本法廷が支持したとの誤った判示をした。近時の先例は、本テストが網羅的又は唯一であることを決して意図しないことを示す(例えば、Parker v. Flook, 437 U. S. 584, 588, n. 9. Pp. 5–8参照)。
(c)101条は、"プロセス"の語が無条件にビジネス方法を除外するという解釈も、同様に排除する。100条(b)の"プロセス"の定義における“方法"の語は、少なくとも文言の問題として、並びに、他の特許法上の制限及び本法廷の判例に照らして、少なくともビジネスをする方法を含みうる。本法廷は、"方法"の" 通常の、現代的、一般的な意味"が、ビジネス方法を除外するとするいかなる主張についても不知である。ビジネス方法の除外が何を除外したいのか、そして、ビジネスを遂行する技術をより直接的に除外するか否か、についても明らかではない。無条件除外の主張は、連邦法が少なくともいくつかのビジネス方法特許の存在を明示的に企図していたことにより、さらに損なわれている:273条(b)(1)において、特許権者が"特許中の方法"に基づく侵害を主張する場合は、主張上の侵害者は、先使用の防御を主張することができる。このような防御を許すことによって、制定法自体が、ビジネス方法特許があり得ることを認めている。
よって、273条は、ビジネス方法は、単に"方法"の1つである、すなわち、少なくとも一定の場合は101条の特許要件を満たす、という理解を明らかにする。反対の結論は、制定法の規定の解釈の準則に反し、いわば他の条項を余計なものとするものである(See Corley v. United States, 556 U. S.参照)
最後に、274条にはビジネス方法特許の可能性について言及が無いようにみえるが、これは、そのような請求項記載の発明の特許性が広いことを示唆するものではない。
(d)上告人の出願は、本法廷が本日拒絶した上記2つの文言上のものではない(atextual)アプローチによって無条件に101条に反するとはいえないが、それは101条の"プロセス"であることを意味しない。
上告人は、リスク回避の概念と、当該概念のエネルギー市場への応用の両方について、特許を請求する。しかしながら、Flook, and Diehrによれば、これらは特許性のあるプロセスではなく、抽象的なアイデアを特許しようとするものである。
請求項1及び4は、数式に基づく、回避及び低減の基本概念を記載する。
これは、Benson 及び Flookの公報のアルゴリズムのような、抽象的アイデアであり、特許性を欠く。上告人の他の請求項も、回避方法を商品及びエネルギー市場でどのように用いることが可能であるかの広範な例で、抽象的な回避のアイデアを特許しようとしたものであり、周知のランダム分析技術を等式中の入力を確率することを補助するために用いることを示すものである。これらは、Flookにおける特許性を有さない発明と比しても、根源的な抽象的原則以上のものではない。